ない過払い金|(2) 被告人の責任能力の有無・程度について ア前記前提となる事実によると,被告人は,平成

過払い金のとおり,判示第2,第3及び第4ののであったこと,判示第4の2の犯行について は,被告人は,Iがタクシー料金の請求をしに来たことを認識した上でで, 「話つけてくる。」
これ
弁護人
判示


判示第4の2の犯行後,B方の玄関前に警察官 が来た際,静かに黙っているのではなく,部屋の中からドアを蹴り飛ばし たりして警察官に悪態を付いたこと,Cらに外に出ないように指示しなが ら,被告人自身はさっさと寝てしまったこと,髭を剃って人相を変えよう とするなど子供だましの行動に出ていることなどを指摘して,被告人はこ の当時合理的な判断ができる状態ではなく,複雑酩酊に近い状態であった 10 と主張する。
しかし,被告人がとった粗暴な言動は,飲酒に伴い他人に危害を加える 犯罪を犯しては4回も服役したことやBの供述などから明らかな被告人の 平素の粗暴な人格が,飲酒の影響もあって表面化したに過ぎないものとみ ることができ,判示第1及び第4の2の各犯行と同様に,被告人の平素の 人格から飛躍した情動行動であるとはいえないし,髭を剃ったり,共犯者 らに対して口封じをするなどの言動は,罪証隠滅行為として合目的的なも のであるから,上記認定を何ら揺るがすものではない。
よって,弁護人の主張は採用できない。
(3) 結論 以上より,被告人は,本件各犯行の当時,完全責任能力を有していたもの と認められる。
2 争点?について 検察官は,判示第4の1の詐欺罪と判示第4の2の強盗致死罪について併合 罪の関係に立つと主張するのに対し,弁護人は包括一罪と評価すべきであると 主張する。
そこで検討すると,本件は,被告人らが判示第4の1の詐欺により,タクシ ー料金の支払をせずに降車して目的地までのタクシー乗車という財産上不法の 利益を得た直後,被害者であるIが上記タクシー料金の支払を請求しようとし てタクシーのエンジンをかけたまま,被告人がいるB方の前まで来たため,被 告人において,タクシー料金の支払請求を免れようとして暴行に及んだことが 認められる。
そうすると,判示第4の1の詐欺罪と判示第4の2の強盗致死罪については, 無賃乗車とその料金債務を免れることの法益面での密接な関連性,及び,2つ の行為の時間的場所的近接性が存し,同一機会に継続して行われたものと認め られる。
11 このような事実関係に照らせば,判示第4の1の行為と判示第4の2の行為 について,いわゆる包括一罪が成立するというべきであるから(最高裁判所第 1小法廷昭和61年11月18日決定・刑集40巻7号523頁参照),検察 官の主張は採用できないが,弁護人の主張には理由がある。
(量刑の理由) 本件は,被告人が,共犯者らと共謀の上,タクシーの無賃乗車2件及び無銭飲食 1件を行った詐欺の事案3件(判示第2,第3及び第4の1),被告人が単独で暴 行した事案(判示第1)及び被告人が判示第4の1の無賃乗車に引き続いて行った タクシー運転手に対する強盗致死の事案(判示第4の2)である。
まず,判示第4の2の事案についてみると,被告人は,一旦は支払を免れたと思っ たタクシー料金を請求してきた運転手である被害者に対して立腹し,支払を免れる べく暴行を加えたというものであり,その理不尽極まりなくかつ利欲的な犯行動機 に酌量の余地は皆無である。
もとより,タクシー料金の請求をするため被告人らを 追いかけた被害者に落ち度があろうはずはない。
被害者が被告人から受けた暴行は 一方的かつ熾烈なものであり,凶器こそ用いていないとはいえ,生命を害する危険 性の高いものであった上,被害者が繰り返し必死で助けを求めたにもかかわらず, 被告人はこれを全く意に介さずに意識不明になるまでに暴行を加えており,その態 様は執拗かつ残忍である。
このような暴行を受けた際の被害者の肉体的苦痛や恐怖 感は察するに余りある。
そして,被害者は,3か月近く後に,一度も意識を回復す ることなく死亡するに至っており,取り返しのつかない重大な結果が生じている。
三女の結婚式を目前に控え,その花嫁姿を見ることもできずに生命を奪われた被害 者の無念さは想像に難くない。
被害者の元妻は,「主人が帰ってこないのであれば, 被告人にも同じ道を歩いてほしい。
」と証言し,被害者の次女は「身長も154セ ンチメートルで小さなやせた父をまるでボロギレの様に,どれほどの暴力を振るっ たのかと思うとはらわたが煮えくり返るほどの怒りがこみ上げます。
」「私たち家 族は犯人の死刑を望んでいます。
」などと心情を述べ,三女も「私の夢とお父さん 12 のこれからの楽しみ,お父さんを帰して。


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」などと悲痛な胸の内を明らかにし,い ずれも厳しい処罰感情を吐露している。
これに対して,被告人は,法廷において謝 罪の言葉を述べ,また,公判段階に至って謝罪文を送付したにとどまり,それ以外 に何ら慰謝の措置をとっていないのであって,遺族らの心情には誠に無理からぬと ころがある。
被告人は,被害者が倒れていることを認識しながら,救護措置を何ら とっておらず,それどころか,そのまま翌日まで寝入ってしまうなど,被害者の生 命を慮ろうとする姿勢は全くみられない。
かえって,人相を変えようとして髭を剃 り落としたり,関係者に口裏合わせを命じたり,目撃者を脅迫して口止めを図るな どし,自己保身ばかりを考えており,犯行後の情状も悪い。
被告人には,平成14年12月宣告の強制わいせつ致傷による服役前科があるほ か,粗暴犯等の服役前科3個があるところ,各前科はいずれも飲酒の上で及んだ犯 行である。
被告人は,これらの各前科に関する裁判の際,飲酒を慎むことを再三に わたり誓約したにもかかわらず,前刑出所後わずか1年3か月余り後にまたもや飲 酒の上で本件各犯行に及んだものである。
このような経緯に照らすと,飲酒の上で の犯行であることは,何ら有利な情状とはいえず,むしろ被告人の規範意識の希薄 さが顕著に現れたものとみるべきであり,さらに,被告人の再犯の危険性も指摘す ることができるものである。
次に,判示第1の犯行についてみると,被告人は,同事件の被害者が被告人を無 視するような態度をとったことなどに立腹して一方的に暴行を振るっており,短絡 的な犯行動機に酌量の余地はない。
犯行態様も,無抵抗の被害者の胸部付近を何回 も蹴りつけるなどしたもので,執拗かつ悪質である。
さらに,判示第2,第3及び第4の1の各犯行についてみると,被告人は,各犯 行に及ぶ際にはわずかばかりの小銭しか有しておらず,タクシーに乗車してミナミ に向かい,飲食して,再びタクシーに乗車して戻ってくるまでのわずか4時間足ら ずの間に,次々と詐欺行為を繰り返したもので,その利欲的な犯行に酌量の余地は 全くない。
犯行態様も,判示第2の犯行では詐言を用いて料金の請求を免れ,また, 13 判示第3の犯行では虚偽の電話番号や住所を伝えてその場を取り繕おうとしてお り,巧妙で手慣れた犯行である。
被告人は,これらの各犯行の被害者に対して一切 被害弁償をしておらず,被害者らが厳重処罰を望むのも当然である。
したがって,被告人の刑事責任は相当重い。
しかし,他方で,判示第4の2の犯行については,無賃乗車時点での計画性は認 められず,被告人は,タクシー料金の請求のため被告人らを追ってきた被害者に対 し,その支払を免れようという意図のほか,理不尽極まりないものであるとはいえ 自己の思惑に反する成り行きとなったことによる怒りを感じ,衝動的に暴行に及ん だという色彩も強く認められる。
そうすると,当初から金品などの金銭的利得をも くろんで暴行,脅迫に及び,被害者を死に至らしめる典型的な強盗致死事案に比す れば,多少なりとも犯情を軽くみる余地がある。
また,被告人は,捜査段階及び公判段階において,各犯行の状況についてほとん ど記憶が欠落している旨述べているところ,被告人の飲酒量は相当多量に及んでい る上,被告人は,判示第4の2の犯行後にも飲酒を重ねていること,被告人は,多 量な飲酒を裏付けるお好み焼き店における飲酒自体も記憶していない旨述べている こと,本件各犯行を犯したことは全て認めており,記憶がないと述べることが被告 人に必ずしも有利になるわけではないことなどに照らせば,判示第4の2の犯行に ついて,被告人が翌日の午後8時ころにも目撃者に対し口止めをしたことなどを考 慮しても,検察官が主張するように,被告人があえて各犯行状況について記憶がな いと虚偽を述べていると断ずることはできない。
そうすると,被告人が,判示第4 の2の犯行の遺族や判示第1,第2の各犯行の被害者に対する謝罪文や反省文を書 き,公判廷でも謝罪の意思を表し,今回の事件を悔い改めて生きていくことが償い だと考えている旨述べるのは,反省の情の表れとして有利に評価すべきである。
その他,判示第1の犯行の被害者は被告人を宥恕していること,生い立ちが不遇 であること,交通事故の後遺症も窺われることなど,被告人のために有利なあるい は酌むべき事情がある。
14 そこで,これらの事情を総合考慮して,被告人に対しては,酌量減軽の上,主文 の刑に処するのが相当と判断した。


個人再生の限度額
被告人
被告人は,判示第2の犯行では,Eに対し,詐言を用いてタク シー料金を支払わずに逃走していること,判示第3の犯行では,被告人は, 代金の支払を求められた際,Gに対して虚偽の電話番号を伝えるなどして 支払を免れようとし,同行した先の交番でも,虚偽の住所を告げてその場 9 を逃れ,結局飲食代金の支払を免れたこと,判示第4の犯行に際しては, Bらを先に降車させて料金の請求を免れていることからすると,被告人は, 種々の手段を弄してタクシー料金及び飲食代金の各支払を免れるという目 的に合致した,合理的な行動をとっていると認められる。 加えて,被告人が判示第4の2の犯行に及んでいる最中,目撃者である Kからとがめられるや,Kに対して脅迫を加えていること,犯行直後,B に対して,被告人がタクシーの運転手に暴行を加えた旨述べていること, Bらに対して口裏合わせを図ったこと,さらに,犯行の翌日にも,被告人 は,LやCに対してB方から出ないように指示したり,人相を変えようと 髭を剃り落としていること,その日の午後8時ころにも,Kに対して再度 口止めをしていること,携帯電話で,人を呼び寄せてB方から逃走しよう と画策していたことなどからすれば,被告人には,判示第4の2の犯行当 時,見当識障害はなく,少なくとも翌日午後8時ころまで犯行の記憶が保 たれていたこと,また,そのような四囲の状況の認識や記憶に従って,罪 証隠滅に向けた合目的的,合理的な行動をとる能力が存したことが明らか に認められる。 以上の事実に照らすと,被告人が捜査段階及び公判廷において犯行の記 憶がないと述べていることを考慮しても,被告人は,本件各犯行の時点で, 飲酒酩酊により,事理弁識能力または行動制御能力に欠け,あるいはそれ らが著しく低下した状態にはなかったものと認められる。